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市場が最も嫌うのは「不確実性」とされる。


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市場が最も嫌うのは「不確実性」とされる。
中国は政府に不都合なことは隠すし、いつどのように政策を変えるかわからない。実態は「不透明」で先行きは「不確実」。7%程度とされてきた中国の成長率も、実態は5%なのかもしれない。

 資産価格分析でノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授は「新しいストーリーがバブルを醸成するが、米国の住宅バブルのとき、『中国人が買っている』という話もあった」と語っている。

 2008年のリーマンショック後、世界経済を支えたのは約4兆元の投資を行った中国だ。消費も旺盛で世界中から中国人の“爆買い”に視線が集まる。

 この中国への過剰な期待が、上海株急落と人民元切り下げを機に、不安にはっきり転化した。目先の混乱が一度収束しても、中国リスクは再燃し市場を揺さぶろう。実態が把握されなければ、真の解決はできないからだ。

 8月25日に中国人民銀行は、政策金利と預金準備率の引き下げという緩和策を発表したが、効力は薄く、上海総合指数は翌日も続落した。

 今回の中国ショックがリーマンショックと違う点は、銀行を通じた金融システム危機には直結していないことだ。世界各国の中央銀行が直ちに動かないのはそのため。リーマンショックを教訓に資本強化やリスクへの規制を厳しくしたのが機能している。

 逆に共通点は世界中で実体経済が影響を受けることだ。世界の名目GDP(国内総生産)77兆8688億ドルのうち、2位の中国は10兆3601億ドルで、その比率は13.3%(14年)。中国景気が失速すれば、世界が中国の消費頼みの中、米国も日本もドイツも輸出減の逆風を受けやすい。米アップルやコマツなど、中国での売上高が多い企業の業績も当然、下押しされる。

 事実上、中国経済圏に含まれるアジアの新興国は、より打撃が深刻だ。資源国にしても中国の需要減退による原油価格下落などが直撃する。

 第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストは「米国の利上げ観測に加え、人民元切り下げがドル独歩高の連想を強め、新興国からの資金流出を加速させる」と懸念。「インドネシアなど構造的な経常赤字国、トルコのような短期対外債務に比べ外貨準備の少ない国は厳しい」と指摘する。

 通貨下落でインフレが進み、政治的不安定も増す。1990年代末の通貨危機再来を懸念する声もある。

 一方で、FRB(米国連邦準備制度理事会)は、ECB(欧州中央銀行)や日本銀行が金融緩和を拡大するのを尻目に、「利上げ開始はリーマンショック後のトラウマが癒えたシグナル」(イエレンFRB議長)とし、政策の正常化を図りたいと考えてきた。

 今年6月、IMF(国際通貨基金)が新興国からの資金流出を憂慮し、「16年上期に利上げを延期すべき」と提言しても、イエレン議長は「年内が適切」と市場に言い続けてきた。

 米国の失業率は劇的に改善、利上げの環境は整いつつある。個人消費やインフレ率で弱い数字が出ても、年内利上げの旗を降ろしていない。

 みずほ総合研究所の小野亮主席エコノミストは「海外発の市場パニック発生で、9月利上げはさすがに難しい。が、8月24日にアトランタ連銀のロックハート総裁が語ったように、12月を考えているだろう」と予測する。

 9月4~5日のG20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議は要注目だ。ここで各国が一致して市場の動揺を抑えるメッセージを発することができるか。

 中国リスクに加え、FRBやイングランド銀行が利上げに及び腰となれば、世界中の中央銀行が緩和モードになろう。ユーロ圏でも存在感の大きいドイツやフランスの成長率が減速してきた。日本も4~6月期のGDPが年率で前期比マイナス1.6%に転落している。

 日銀にとっても嫌なことに、原油安で2%の物価目標が遠のくため、追加緩和の検討に入るかもしれない。またぞろ補正予算の呼び声も高まりそうだ。結局、危機的な破裂を迎えるまで、世界中がバブル崩壊を“新たなバブル”でしのぐ政策からは、脱却できないのではないか。
by denhazim | 2015-09-05 20:39