➡︎サンドラ サッチャー教授の名前を聞いていました。著書を読んでみたい。

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➡︎サンドラ サッチャー教授の名前を聞いていました。著書を読んでみたい。
ハーバード ビジネススクールで10年間、「モラルリーダー」として日本の昭和天皇を賞賛してくださっている教授。確かな分析力と説得力があり、アメリカが日本に対しての原爆投下についても、当時のトルーマン大統領の事情を含め、言及があり、現職のオバマ大統領とモラルリーダーと賞賛する昭和天皇の共通点にも言及しています。
【ハーバードの知性に学ぶ「日本論」】
第34回 ハーバードで「原爆投下」はどう議論されているか サンドラ・サッチャー教授に聞く(2)
2016年8月6日、広島に原爆が投下されてから71年を迎えた。
拙著『ハーバードでいちばん人気の国・日本』でご紹介した授業、「モラルリーダー」は大きな反響を呼んだ。トルーマン大統領だけではなく、昭和天皇のリーダーシップについても学ぶからだ。
この授業を担当するサンドラ・サッチャー教授は、なぜ日米双方の視点から原爆投下を教えることにこだわるのだろうか。また昭和天皇の玉音放送をハーバードの教材とする理由とは?オバマ大統領の広島訪問後、自らの授業をあらためて解説してもらった。(聞き手/佐藤智恵 インタビュー<電話>は2016年5月29日)
■アメリカ人学生の広島訪問は
「原爆投下」への考え方を大きく変える
佐藤 サッチャー教授はハーバードビジネススクールで10年以上にも渡って「モラルリーダー」(道徳的なリーダー)という授業を教えています。その中で、「トルーマンと原爆」について2時間近く議論する回がありますね。アメリカ人学生だけではなく、他の国の学生もいる中で、どのように議論が展開されるのでしょうか。
サッチャー 広島を訪問したことがある学生が発言すると、議論の流れが大きく変わりますね。彼らが広島で実際に見てきたことを語ると、次第に原爆の犠牲者に同情する学生が増えてくるのです。最初は「戦争を終結させるために、アメリカは原爆を投下せざるをえなかった」と信じていた学生たちも、本当にそうだったのだろうか、と考えが揺らいでくるのが分かります。
佐藤 広島に行ったことがある学生と行ったことがない学生。サッチャー教授の目からごらんになって、どこがどう違うのでしょうか。
サッチャー 広島訪問は学生たちの価値観を一変させるようです。特にアメリカ人の学生は強い影響を受けてきます。原爆がもたらした甚大な被害を実際に見て、被爆者の方々の苦しみを知る。こうした経験は学生の考え方を大きく変えるのです。
多くのアメリカ人学生は、「真珠湾攻撃によって日本が戦争を始めたのだから、トルーマン大統領ができるだけ早く戦争を終結させるために原爆を投下したのも、やむをえなかったことだ」と信じています。それによって多くのアメリカ人と日本人の命が救われたのだから原爆投下は正しかった、とトルーマンの決断を支持する傾向が強いのです。
ところが、広島に行ったことがない学生が皆、同じ考えかといえば、実はそうでもない。中には、やはりこれだけの人々が亡くなるような行為は、正当化されないのではないか、と発言する学生もいます。
あるいは、原爆投下が倫理的に許されないなら、東京大空襲はどうなのか、という問題提起する学生もいます。この2つの攻撃はどこがどう違うのだろうか。あるいは同じなのだろうか。これはとても深い哲学的な問題なのです。
■「トルーマンと原爆」の授業で
議論が白熱する2つの理由
佐藤 数年前にサッチャー教授にインタビューさせていただいたときに、「トルーマンと原爆」の授業は毎回物議をかもす、とおっしゃっていました。なぜそれほど議論が白熱するのでしょうか。
サッチャー 2つ理由があると思います。1つは、原爆を投下することは、想像を絶する被害をもたらす行為であるがゆえに、「このような兵器を使用することが正当化されていいのか」という疑問がわきます。これは根本的な問題です。戦争中でもあっても、敵と戦っているときであっても、「絶対にやってはいけないこと」とは一体何だろうか。この問題については様々な意見があり、議論が白熱します。
もう1つは、学生たちはそれぞれ政治に対して独自の考え方を持っていることです。これがさらに議論を複雑にします。私の授業には中国人の学生もいますが、彼らの中には、第二次世界大戦中、日本に占領されていた時代、中国人はどれだけつらい思いをしたか、と熱心に発言する人もいるのです。アメリカ人学生に占領されていた側の立場をもっと知ってもらいたいという気持ちからでしょう。
こうした異なる政治的な意見をぶつけあいながら、1つの合意点を探っていくプロセスであるために、議論が白熱するのです。学生も倫理的な問題について、とても深く考えて、発言しなくてはなりません。人間は議論することによって学ぶことができる、と私は信じていますが、そういった意味では「トルーマンと原爆」の回は、とてもよい授業だと思います。
■「トルーマンの決断」は
リーダーをめざす学生にとって重要な教訓
佐藤 日本への研修旅行に参加したハーバードの学生に何度かインタビューをしたことがありますが、「最も印象に残ったのは広島だった」と答えた学生が多かったです。サッチャー教授の授業では、トルーマン大統領だけではなく、他のリーダーについてもとりあげていますが、「トルーマンと原爆」の回は、やはり学生に強烈な印象を残すのでしょうか。
サッチャー 最も重要な授業の1つであることは間違いないと思います。授業で特に集中して議論するのが、トルーマンが原爆投下を決断するまでのプロセスです。記録によれば、トルーマンの側近は誰も原爆を投下することに対して異議を唱えなかったといいます。つまり非常に偏った情報の中でトルーマンは決断したことになるのです。
これは将来、リーダーをめざすハーバードの学生にとっては特に重要な教訓となります。リーダーは決断した“結果”だけではなく、決断するまでの“プロセス”に対しても責任を負わなくてはならないのです。議論なき決断は、根拠に乏しく、間違った方向に導く恐れもあります。なぜなら考慮すべき他の可能性、そこから想定される結果を、すべて排除してしまうからです。
■昭和天皇の玉音放送から学ぶ
「モラルリーダーシップ」
佐藤 サッチャー教授の授業では、被害者としての日本の立場からも原爆投下について学びますが、そのことによってアメリカで批判されたりしたことはありましたか。
サッチャー そういうことは特にありません。私の授業では、アメリカと日本、双方の立場から、原爆投下という決断について考えてもらいます。公平な視点で考えることが何よりも大切だと私は考えるからです。授業前には、学生に原爆の被害者について書かれたノンフィクション作品を読んできてもらいますし、私は授業の最後を、必ず、昭和天皇の「終戦の詔勅」で締めくくることにしています。
佐藤 「終戦の詔勅」(玉音放送)から何を学ぶのでしょうか。
サッチャー 昭和天皇は、「終戦の詔勅」で、連合国に降伏する理由、戦争を終結させる理由を国民に伝えています。日本の名誉が問われ、多くの日本人が亡くなった中で、戦争を終結させる決断をするのはどれほど難しいことだったか、を議論するのです。
佐藤 実際に授業で玉音放送を流すのでしょうか。
サッチャー 私が英語で次の箇所を読むのです。
「それぞれが最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転せず、世界の大勢も我々にとっては有利な状況をもたらしていない。そればかりか敵国は新たに残虐な爆弾を用いてしきりに無実の国民までも殺傷し、凄惨な被害の及ぶ範囲はまさに予測できないほどに至った。(中略)これこそ、私が日本国政府に共同宣言を受諾するよう命じた理由である。(中略)
考えてみても、今後我が国の受ける苦難は言うまでもなく尋常なものではない。あなた方国民の気持ちも私にはよくわかる。しかしその気持ちを理解していても、私は時の赴くままに従い、耐え難く忍び難い思いをこらえて、永久に続く未来に向けて平和な世の中を切り開いていきたい。」
(現代語訳:ダイヤモンド・オンライン編集部)
佐藤 「終戦の詔勅」をハーバードの教授が授業の最後に読む、ということの社会的意義はとても大きいと思います。サッチャー教授が昭和天皇のメッセージを通じて、学生たちにいちばん伝えたいことは何でしょうか。
サッチャー モラルリーダーシップというのは、「勝者」から学ぶものだ、と考えがちですね。つまり勝った方が道徳的にも正しいのだと。でも「敗者」から学べることもたくさんあることを知ってほしいと思います。負けた側のリーダーの行為の背景には、どんな目的があり、意味があり、動機があったのか。そこから、モラルリーダーシップを学べることも多々あるのです。
■昭和天皇「終戦の詔勅」と
オバマ大統領「広島演説」の共通点
佐藤 サッチャー教授は、前回のインタビューでオバマ大統領の広島訪問について解説してくださいましたが、昭和天皇の「終戦の詔勅」とオバマ大統領の広島演説、どのような共通点がありましたか。
サッチャー 未来に向けてのメッセージ、そして平和な世界を実現するにはとても困難を伴うことを伝えている点が共通していると思います。
昭和天皇は、「ポツダム宣言受諾後の日本には苦難が待ち受けている」という現実を伝えられ、オバマ大統領は、「核なき世界は簡単に実現できるものではない」ということを伝えました。つまり、私が皆さんにお願いしていることは、とても苦難を伴うことですよ、と強調しているのです。
「終戦の詔勅」と「広島演説」では、誰に向けた言葉であったか、という点が違っていました。昭和天皇は日本国民に向けて、オバマ大統領は世界の人々に向けて、メッセージを発せられました。しかしどちらのスピーチも、とても力強いモラルリーダーシップを示していたと思います。
佐藤 次回の「トルーマンと原爆」では、オバマ大統領の広島訪問についても教えるのでしょうか。
サッチャー もちろん、付け加える予定です。今回のオバマ大統領の行動、リーダーシップについて考え、学生が自らのモラルリーダーシップを磨くことにつながればと願っています。
▼ハーバードで「原爆投下」はどう議論されているか サンドラ・サッチャー教授に聞く(2)
ハーバードの知性に学ぶ「日本論」 佐藤智恵|ダイヤモンド・オンライン 2016.08.06.
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