ノーベル賞:選考の裏側 詳細は発表から50年間秘密




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ノーベル賞:選考の裏側 詳細は発表から50年間秘密

 今年もノーベル賞発表の季節がやってきた。1901年の第1回以来、数ある自然科学の賞の中で、別格の地位を保ち続けているが、受賞者は誰がどのように決めているのだろうか。医学生理学、物理学、化学の自然科学3賞の選考過程の裏側や権威の秘密を探ってみた。【藤野基文】

 ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で知られるスウェーデンの化学者で実業家、アルフレッド・ノーベル(1833〜96年)の遺書に基づいて創設された。授賞対象を国内の研究者や選考団体の会員に絞らず、国外の研究機関や研究者にも推薦を依頼するという世界初の国際賞だ。

 遺書に従い、物理学と化学両賞は王立科学アカデミー、医学生理学賞はカロリンスカ研究所が選考・授与する。選考方法は創設以来ほぼ変わらず、毎回1年以上をかける。

 選考は授与の前年9月、各選考機関が設置するノーベル委員会が、過去の受賞者を含めた世界約3000人の研究者に推薦依頼状を発送することから始まる。推薦は1月31日到着分で締め切り、それ以降の到着分は次の年の選考に回される。自薦はできない。

 毎年約250〜350人の名前が挙がり、委員会は世界中の専門家の意見を聞いた上で、6〜8月に最終的な候補者を絞り込む。9月に最終候補者の推薦状が委員会から各選考機関に提出され、議論される。そして発表当日、選考機関のメンバーによる投票で受賞者が決定する。

 選考過程の詳細は発表から50年間は秘密。その後、ノーベル財団が認めた研究者などに限り、内容を閲覧できる。

 閲覧を認められている岡本拓司・東京大准教授(科学史)によると、受賞を逃した日本人で最も惜しかったのは病理学者の山極勝三郎だという。山極は世界で初めて、がんを人工的に作ることに成功し、1926年の医学生理学賞の候補になった。しかし、がんの研究で山極とフィビゲル(デンマーク)を推薦したスウェーデン人の医学者が、なぜか最終段階で山極を外した。26年の賞はフィビゲルに与えられたが、後にこの業績は「誤り」だと判明した。

 他に、第1回の医学生理学賞の候補に日本の細菌学の創始者である北里柴三郎が挙がっていたことや、細菌学者の野口英世が日本人候補者で最多の9回もの推薦を受けていたことも明らかになった。

 ノーベル賞の権威について、授賞式に何度も招待されている黒田玲子・東京理科大教授(生物化学)は「人類に貢献している分野の扉を開いた人に与えられるという『学問を大切にする思い』、そして、選考から授賞式のやり方に至るまで守り続けられている伝統。これは他の賞がまねようとしても、できるものではない」と話す。

 今年、その栄誉に浴するのは果たして?
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by denhazim | 2015-10-03 09:03