2013年 09月 03日 ( 1 )

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「言い訳が多い中国人」の心理学 …むしろとてもグローバルなその思考と行動

  日本の製品は、高い品質を誇りながら、中国マーケットにうまく食い込めていない。その最大の理由は、ブランド戦略の甘さにある。この連載では、北京電通に7年駐在し、グローバル企業のブランド戦略のコンサルティングを手掛ける著者が、中国人の心を掴むためのブランド創りを解説。教科書的なブランド論ではなく、ビジネスの現場で起きている事実をベースに、実践的なブランド戦略を発信する。

★『反省しないアメリカ人をあつかう方法』

 中国で仕事をしていれば、当然、自社内もクライアントも中国人だらけです。彼らの思考回路や行動様式は日本人とはかなり異なりますから、その特質をいち早く見抜いてマネジメントやクライアントサービスのやり方を変えていく必要があります。しかし、実際問題、中国人はなかなか手ごわく、一筋縄ではいきません。私たちにとっての「当たり前」が通用しないケースが多いので、フラストレーションを感じる日本人は多いと思います。

 特に、隣国としての気安さから、中国人を日本人の延長線上で見てしまうと痛い目に遭います。私は常日頃から、中国の大都市で働く若いホワイトカラー層の考え方や行動はアメリカ人によく似ていると感じています。たとえば、自我がよく確立していて自己中心的な反面、家族と友人は大切にします。また、こらえ性がなく、嫌なことがあるとすぐ会社を辞めてしまいます。プライドが高く、人前で叱責されることを極端に嫌がります。

 さらに、プラス面を挙げると、「物おじしない、尻込みしない」「人前で堂々としゃべる」「現場で何とかしのぎ切る馬力がある」「人脈の使い方がうまい」。一方、マイナス面では、「時間にルーズ」「気配りできない」「人のせいにする」「できないことでもできると言う」「計画性がない」「人と協力し合わない」などといった特徴があります。

 日本人にとって異質でやっかいな外国人と、グローバル組織の中で上手にコラボするにはどうしたらよいのでしょうか? 参考になるのが、ちょうど10年前の2003年に出版されたビジネス書、『反省しないアメリカ人をあつかう方法』(ロッシェル・カップ著、株式会社アルク)です。その頃、東京で働いていた私は、初めてアメリカ人とインド人の部下を持ちました。彼らを上手に動機づけして能力を発揮してもらえるよう、にわか勉強のためタイトルに魅かれて購入しました。

★アメリカ人には気をつけろ!

 この本は、アメリカ人経営コンサルタントである著者が、日本企業へのコンサルティング経験をベースに書いた「アメリカ人を知らない日本人がアメリカ人を管理する方法論」なのですが、同時に、たいへん優れた日米の比較文化論となっています。職場における一般的なアメリカ人の価値観と行動原理を、アメリカ人自身が日本人向けに解説してくれているので、説得力も抜群です。

 その第1章「アメリカ人には気をつけろ!」では、アメリカ人と一緒に仕事をする日本人がストレスを感じるポイントが、以下のようにまとめられています。

 (1)文句の多いアメリカ人、(2)反省しないアメリカ人、(3)褒められたいアメリカ人、(4)がまんできないアメリカ人、(5)締め切りを守らないアメリカ人、(6)権威に弱いアメリカ人、(7)批判に弱いアメリカ人、(8)おしゃべりなアメリカ人、(9)秘密主義のアメリカ人、(10)「ノー・プロブレム」と言うアメリカ人、(11)「can do」と言うアメリカ人、(12)「That’s not my job!」と言うアメリカ人、(13)残業しないアメリカ人、(14)他部署からの依頼を軽んじるアメリカ人、(15)同じ失敗を繰り返すアメリカ人、(16)注文の多いアメリカ人。

★中国人とアメリカ人は「うり二つ」

 今回のコラムで中国人の特徴を紹介しようとして思い当たったのは、上記の「アメリカ人」というところを「中国人」に置き換えてもほぼそのまま通用する、ということです。

 たとえば文句や言い訳が多く反省しない、という特徴。朝遅刻したことを注意すると、必ず「雨が降って道路が渋滞した」などの言い訳をしてきます。北京の中心部が朝渋滞するのは当たり前ですから、特に雨が降ったときには早めに家を出るのが日本人の常識ですし、仮に遅刻した場合でも聞き苦しい言い訳は控えるものです。こうした言い訳は、宿題を忘れたことを教師に叱責された生徒が「犬が食べちゃったんです」と言い逃れようとする、アメリカンジョークを思い出させます。

 中国人が、自国内ならまだしも海外旅行先で例の「カーッ、ペッ!」をやってひんしゅくを買っているのは事実ですが、アメリカ人だって唾を吐き散らす人はいます。テレビで大リーグ中継を見ていると、メジャーの選手たちがプレー中やダグアウトの中で、あたり構わず唾を吐いているのが見えてしまいます。日本人の感性では、競技場は鍛え上げた心技体をぶつけ合って相手と真剣勝負する場ですから、塩をまいて清めることはあっても、唾を吐き散らすなど到底ありえない行為です。「常識」とか「価値観」とは、国や人によってこれほどまでに隔たりのあるものなのです。

★実はみんなが「グローバル」?

 中国人とアメリカ人の思考や行動の共通点を考えていると、こうした特性はインド人やフランス人にも当てはまるような気がしてきます。もしそうだとすれば、このような特性はむしろグローバルでは「常識」だということになります。日本人から見るとけしからんことが、日本の外ではむしろ普通であって目くじら立てるような問題ではない、というのはよくあることです。

 たとえば、私が日頃、特に社内のマネジャークラスの中国人を見ていて気になるのが、「有用な情報を共有しようとしない」「そもそも隣の部のマネジャーと話もしない」「他人から学ぼうとしない」ことです。ヨコの連携とクロス・ファンクションで組織全体の柔軟性と生産性を高めるのが大事なのだと、何度話をしても変わりません。

 彼らにとっては、いつまで勤めるかわからない現在の職場で、会社の全体最適を考えろと言われても得心がいかないのだと思います。あくまで自分のパフォーマンスへの評価を高めることが大事で、そのためには他人の評価は低いほうがよいとすら思っているのでしょう。しかし、彼らから見ると、自分を犠牲にしてでも組織のために貢献する日本人の姿勢こそが不可解でしょう。『反省しないアメリカ人をあつかう方法』の第2章は、「こんな日本人と日本企業もコマリマス…」と題して、逆にグローバル基準から見た日本人の理解しづらい不思議な特質を考察しています。

★グローバルでは、言い訳するのが当たり前

⇒在米期間の長かった私から見ると、言い訳は、所詮、言い訳!(笑)

 中国人もアメリカ人もインド人もよく言い訳をします。日本人からすると「言い訳ばかりしやがって」ということになるのですが、ここで冷静になって彼らの思考パターンを分析する必要があります。彼らにとって「言い訳」とは、相手からの非難に対する反論であって、言い訳しないのは議論する「能力」が欠如していることを意味します。ですから、言い訳しないほうがヘンなのです。

 一方、日本人は「言い訳」は自己弁護であり、卑怯なふるまいを意味します。言い訳しないのは、能力がないからできないのではなくて、言い訳する「態度」が好ましくないと思っているのです。言い訳という行為を、片や「能力」の問題ととらえ、こちらは「態度」の問題と考えるのですから、すれ違いが起こって当然です。「言い訳上手」と「言い訳嫌い」は、一体どうすれば共存できるのでしょうか?

中国ではビジネスもグローバル式

 人々の態度や行動だけでなく、ビジネスのやり方にも「常識」の違いは存在します。日本企業にとって中国市場はやっかいで高リスクの市場であることは周知のとおりです。しかし大きく見ればそこはグローバル市場のひとつであって、競争ルールや競合相手、顧客の価値観や購買行動もグローバルビジネスの常識で理解すべき市場です。逆に言うと、日本の常識やビジネスモデルに縛られていてはうまくいきません。

 広告業界を例にとると、中国では1990年代から「4Aエージェンシー」と呼ばれる欧米系の有力広告会社が進出しており、欧米式の「フィービジネス」が中国ローカル広告会社にも広く普及しています。このビジネスモデルは、クライアントに提供する広告戦略やクリエーティブ表現制作の対価を月極めの「フィー」で請求するもので、テレビやインターネットなどの広告メディアの代理販売ビジネスとは切り離して行われています。

 一方、日本国内では現在でも広告メディアの購買代行に伴う「コミッション」型の取引が主流です。多くの場合、メディアの扱いとクリエーティブの扱いはセットになっており、キャンペーン戦略立案やクリエーティブ作業の費用はメディア・コミッションに含めて一括して請求する方法が採られています。

 こういったやり方に慣れていると、中国で現地クライアントの仕事を受注する際に戸惑ってしまうわけです。こちらはグローバル方式ですから、メディアの仕事はメディア・エージェンシーが受注します。広告会社は「ブランド・エージェンシー」と呼ばれ、主としてコミュニケーション戦略の立案や広告表現の制作を担当して、対価を月額フィーで請求するのがグローバルの常識です。

 ビジネス・ルールでも人々の行動でも、グローバルと日本の差を埋めるには、まずは相手側の論拠や心理を解読することが必要でしょう。そのうえで、異なる特質をお互いが上手に利用し合って、両者が共有できる新たな「常識」を創るしか、共存の道はなさそうです。
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by denhazim | 2013-09-03 11:37